Catch−All / SWAG (2001)

     Roots         ★★

     Pop         ★★★★★

     Rock       ★★★

     Industrial   ★★★




これは、久々のスーパープロジェクトの登場であると思う。と言いつつ、後に紹介するRaisins In The Sunもイレギュラーのパート・タイム・プロジェクトだったりするのだが、細かいツッコミは精神衛生上悪いので敢えて気にしないこととしよう、そうに決まった!はい決定。・・・・・とアホはこっちに置いといて、昨年に10インチの4曲入りアナログシングルを既にリリースし、そのサンプルが非常にキャッチーであったので、首長竜になって(元ネタ古過ぎ)期待していたSWAGのフルアルバムが漸く手元に到着の運びとなった。親レーベルのYEP RECORDSの話では2月にコンタクトをとったところ、「少々まっとってちょ。」的な返事を戴いたが、結局注文から1ヵ月半くらい待たされた。海外通販には忍耐が必要なのであると、しみじみ再考させられたりした。しかし、このレーベル、対応は非常に良いのでこれからも贔屓にしたいとは考えている。レーベルメイトに昨年かなりの良作をリリースしたThe Mayflies USAや、中々のカントリーロックアルバムをリリースしたばかりのGreg Hawks & The Trembles等がいます−ちなみにこのあるアルバムはすぐに届いた。
さて、かなり脱線してしまったので、SWAGに話題を戻そう。メンバーはKen Coomer(Wilco)、Tom Petersson(Cheap Trick)、Robert Reynolds(Mavericks)、Doug Powell、Jerry Dale McFadden(Sixpence None The Richerとアルバムに貼られたステッカーでは説明されているが、MavericksやJason & The Scochers等幅広いサポート活動の鍵盤弾き)というメンツである。オルタナ・カントリー好きな方、いやアメリカン・ロックが好きな方なら、思わずニヤリとしてしまう、通なメンバーである。プロデューサーにBrad Jones(Steve EarleやRoss Riceのアルバムでベースやギター担当)という人選で、やや浮遊感のあるポップな音−ロス・ライスのアルバムに見れるような−が来るかもと想像したが、当たらずも遠からず、70年代ポップ・ロックの薫りが満載のアルバムになっている。集まったメンバーがカントリーロック系のグループからの人材が多いので、もっとルーツカラーが強くなるかも、とも想像していたが、あまり土臭い感じのしないのには正直驚いた。パワー・ポップと呼んでも差し支えないだろうが、近年のノイジーなリフに形だけのメロを乗せる「勘違いパワポ」のような安っぽさとは無縁で、60〜70年代の元祖的パワーポップ(当時はそのうような範疇はなかったが。)と呼んでも良いのではないだろうか。BeatlesやCheap Trickの影響も随所に見られる。特に#2『I’ll Get By』などはモロにチートリな曲である。リード。ヴォーカルも基本的に全員で取っている。何と、Kenまでがリードを取っているのには驚きである。(笑)#9『Eight』であるが、『A.M.』の頃のWilcoが演奏してもおかしくないキャッチーなナンバーである。キャッチーといえば、やはり前述の10インチに収められていた#1、5、6、7の4曲が飛び抜けており、全編こうなら良かったともポップ至上主義な私は少々残念である。特に#1『Lone』のキャッチーなアカペラコーラスから突入する出だしは最高に破壊力満点である。
こういう良心的なPop-Rockアルバムがなかなか本邦で紹介されないのは、非常に残念である。スカンジナヴィアン・ポップの市場性が米国より遥かに高い日本でならきっとリスナーの支持を受けると思うのだが・・・・。まあ、日本のリリース事情に愚痴を言い始めると止まらないので、このくらいにしておこう。(笑)ポップ・ロックが大好きな方には強力推薦の1枚である。


  Too Angry To Pray / Ron Lasalle (2000)

   Roots          ★★★★☆

   Pop           ★★★☆

   Rock         ★★★

   Soul&Blues     ★★★



初回レヴューから、こんなマイナーどころを紹介していいのかいな?とも思うのだが、どうせ大してカウンターも廻るとは思えないので、我が道を行くとしよう、うむ、まさに「Against The Wind」ですな。(笑)さて、まず絶対確実に日本には入ってこないようなインディ・ルーツ系のアーティストを初めて(そらそうや)紹介できる。今後、こういったマイナー系のアーティストが多発すると思うので、ここを読んで戴ける奇特な方々は心しておいて欲しい。(笑)
現在、ナッシュヴィル在住であるという、Ron Lasalle。キャリアは意外と長いらしく、ほぼ10年に渡り、Ron Lasalle & The East Side Rockersという名義で、北米を年間300日のツアーに明け暮れていたそうである。で、On The
Roadの生活に疲弊した彼はカナダはトロントに移住し、悠悠自適に生活しながらレコーディング活動を始め、シングル『Only The Strong Survive』を吹き込み、更に未発に終わった初のフルアルバム『Simple Glories』を製作したそうである。で、以後ナッシュヴィルに移住すると共に、ソングライティング活動を始め、ついにフルアルバムの今作をリリースに至る、とのことである。
さて、肝心の内容の方であるが、まず彼の声が実にソウルフルである。所謂、コッテリ系の声。Joe Cokerを思い起こさせる、あるいはFreewheelersのヴォーカリスト、Luther Russellの声と歌い方のほうが更に類似しそうである。このヴォイスを基幹として、全体に流れるのは小気味良いポップさとブルースフレイヴァーである。ブルースとはいえ、それ程深くベタベタな感じではなく、アーバン・ブルース系のやや軽めのうねりである。ほぼ全曲にオルガン又はピアノが取り入れられ、ブルージーな感覚をゆったりと顕している。参加ミュージシャンに著名な演奏者はこれといっていない。Ron自身はアクースティック・ギターとボゾキというギリシャ製マンドリンをプレイしている。残りのルーツ系弦楽器は共同プロデューサーのBrent Littleが一手に担当しているようである。−彼に関しては全く知識がないので、ご存知の方がいましたら教えて頂きたいです−#4のようにメロウなサックスがフューチャーされるソウル風なナンバーもあれば、#3『Another Day In Nashville』を筆頭とした#5、#11のようにキャッチーなカントリー風のロックナンバーは非常に心地良いし、タイトルトラックの#2や#7『Little Promises Made』のブルースタッチなナンバーは胃にもたれるほど、重くない。#8『I’ve Had It With Love』ではR&B風のデュエットをShawna Hulseという女性シンガーと披露してくれる等、ものすごくキャッチーでシングル・ヒットしそうな曲は無いのだが、多彩な側面を十分に聴かせてくれる。
歌詞の方は、ジャケのステンドグラスから推察される方もいるかもしれないが、かなり宗教色が強いナンバーが多く、無神論で無宗教な私には理解できない箇所が結構ある。宗教概念が絡んでない歌でも、歌い込まれているのは幸せなラヴ・ソングなどではなく、精神面や内面を独白したような内省的な深い歌詞が殆どである。この方向性が決してメジャーに氾濫している浅薄な「恋歌」には見られない、インディゆえの醍醐味ではないかと思う。
メンフィスソウルとカントリーにブルース、そしてポップ・ロック。非常に地味ではあるが聴き応えがあるアルバムである。是非、ルーツ好きな方に聴いて戴きたい1枚である。


  Raisins In The Sun / Raisins In The Sun (2001)

    Roots          ★★★★★

    Pop          ★★☆

    Rock        ★★★

    Jazz&Blues  ★★★★★
  


さて、SWAGに引き続き、スーパー・テンポラリー・プロジェクトアルバムを紹介したい。2001年は出だしから、実に興味深いプロジェクトが続いてくれる。この調子で活動を停止してたり、解散している幾つかのグループが復活してくれると非常に有難いのだが、まあ脱線しそうなので、ここでは言及しない。
SWAGのジャケットとは異なり、こちらは参加メンバーが左中央に書かれているが、この写真では見えないことはないにしろ、読者諸兄を近視にしたくはないので、中心メンバーのみ簡単な捕捉と共に挙げておこう。まず、ヴォーカル担当のJules Shear、2000年に『Allow Me』という好盤をリリースしているが、彼については説明の必要がないだろうから、割愛。(笑)次にギターのChuck Prophetで、Green On Redのギタリストであったヒト。彼は何をトチ狂ったのか、ソロ活動で以前にスクラッチやループを多用したゴミのようなアルバムをリリースした時から見捨ててたのだか、この活動で少し見直された By 管理人。(笑)で、いぶし銀鍵盤弾きのJim Dickinson。97年のChuck Prophetらと組んだライヴアルバム『A Thousand Footprints In The Sand』は記憶にまだ新しい方もいるかもしれない・・・・コア過ぎる自爆ネタな可能性が高いが・・・・。(汗)そして、ベースのHarvey Brooks。Eric Andersonとの活動が著名か?そして、Winston Watson。Bob Dylanのバンドでドラムを叩いてたような記憶がある。以上のかなり渋めなオヤヂ連中が集まって(プラスSean Slade、Paul Q Kolderie)たったの10日で曲を作り、レコーディングされたという、セッション感覚満載の一発どりに近いアルバムである。クレジットによるとレコーディングは1999年5月7日となっている。やはり一発セッション&録音なのであろう。まさにセッション感覚丸出しのリラックスした雰囲気がアルバム全体に滲み出ている感が強い。内容的には、一言で言えば、サザンロックの豪快さよりもルーズさを前面に出し、ジャジーでブルージーな南部ルーツ音楽の側面をゆったりと演奏している感じである。Jules Shearの艶のあるヴォーカルがルーズでいてそれでいて力強い演奏に絡んでいくところが非常にコクがあって良い。#2『Old Times Again』のようなレイドバック感覚溢れるスローなカントリータッチのナンバーから、豪快なブルースロックの#4『Post Apocalyptic Observaations』まで適度なポップさを伴い、十分にヴェテランの演奏を味わえること請け合いである。#10のラストトラックのブルースなインストナンバーは殆ど遊び感覚で入れられたナンバーである。肩肘を張らずに聴けるアルバムであるが、結構リスナーを選ぶディープさは否定できないだろう。鍵盤好きの私はやはりJim Dicksnonの転がる極楽ピアノがツボである。


  Ebum Shoobum Shoobum / The Van Delecki’s (1999)

   Roots         ★

   Pop         ★★★★★

   Rock       ★★★

   Acustic    ★★★★☆
 



のっけから、いきなり強烈な批判をぶちかます。2000年リリースのTeenage Fanclub(以下TFC)の『Howdy』は最悪の駄作中の駄作だった。全く音に厚味が無く、単に浅薄なだけの軽い音創りで、これまでの評価=100年の恋も一気に醒めるというくらいに失望した。が、巷では何故か評判はそれ程悪くない。「何でやねん?」と考えること暫し、結論は日本で彼らのような方向性のバンドがあまりにも知られていないため、必然的に少ない枠の中で有難がるしか無い訳である。これは非常に嘆かわしいことだと思う。TFCのようにポップな良心的バンドは幾らでも存在するのである。これから紹介する『The Van Delecki’s』もそのあまり知名度のないバンドの1つである。
80年代からのポップ・ロックファンで少々マニアの入った方ならご存知の方も結構いるであろう、Power Popグループの『Spongetones』。90年代に入ってもコンスタントにアルバムをリリースしている。このグループの中心人物のJamie Hooverが別プロジェクトとして、これも同時代に活動していたバンド『Let’s Get Milkey』のギタリスト、Bryan Shumateと組んで立ち上げたデュオが、The Van Delecki’sである。96年に1stアルバム『Letter From The Desk Of Count S.Van Delecki』でそのキャリアをスタートさせている。このアルバムも良作であるので、いずれ紹介したいと考えている。何時になるかはわからないが。(汗)このグループの名前はアンディ・グリフィス(TV活動中心のお笑い俳優というとこか?)のショウから引用したそうである。無論、どのような内容のショウかは知る由も無いが、まずユニークなお笑い系のヴァラエティではないかと想像する。
また脱線してしまったが、元々形の決まったレヴューにするつもりは毛頭無いので、お許し戴きたい。さてさて、彼らのサウンドであるが、簡単述べればポップでピュアでアクースティック、とこの3要素に尽きる。ドラム以外の弦楽器と鍵盤はほぼこの2人、JamieとBryanが演奏している。ゲストとしては著名なところでプロデューサーとしても良い仕事が目立つポップの職人、Don Dixonが2枚のアルバムでかなりの曲でベーシストとして参加しているのが目立つ。ソングライティングは勿論中心は2人だが、これまたポップの玄人Bill Lloydやマーシャル・クレンショウの弟、Robert Crenshaw等とも共同で歌を作っている。このメンツが揃えばポップで無い訳はあろう筈も無く、全く気負いのないポップで優しい音が終始一貫続く。Mitch Easterの関わるアルバムと非常に近い方向性ではあるが、ミッチーがどちらかというとブリット的なヒネリを好むのとは違い、アメリカンなストレートなメロディを彼らは好むようである。つまるところ私の嗜好にばっちり合致する訳である。兎に角、活動拠点のカリフォルニアを代弁するような西海岸ロックを継承した爽やかな曲はどれも大変気持ちが良い。間違ってもオルタナのヘヴィなリフは聴こえてこない。ヴォーカルもデュオの特権(謎)のハーモニーがこれまた抜けるような「青空」サウンドである。
どれくらいの方がこのユニットをご存知であろうか?TFC、TFCとレコード屋で手に入るマテリアルだけ有難がっていては新しい音の世界は決して開けてこないのだ。・・・・ついTFCの話になるとヒート・アップしてしまう。誤解無きように、一応言い訳しておくと『Howdy』以前の3枚の作品は大好きである。あまりにも駄作を良いという人達にしか会ってないので少々鬱屈しているようだ。(汗)TFCの『Songs From Northern Briten』が大好きという方には強力推薦したい。


  Strange Days / Acustic Junction (2000)

   Roots            ★★★★

   Pop             ★★★☆

   Rock            ★★☆

   Acustic&Country   ★★★★




またまた、ドマイナーな(間違っても、彼らはメジャーなグループで、東京の輸入レコード屋でバンバン売れてることはないと確信しているが、もし、仮にそうだとしたら是非ツッコミのメールを戴きたい。平謝りします。)グループを紹介したい。というかマイナーオタクの筆者には、こういった知名度の低いアーティストについて言及してる時が、至福であるという度し難い習性がある・・・・とはいえ、殆どの方がご存知であるとは思うので敢えて気にしない。(ヲイ)反して、殆どのリスナーがご存知ないであろう、この「こないな名前付けて、名前負けしたらどないすんねん!。」と絶対ツッコミを入れたくなる(というか入れてちょ)『Acustic Junction』。名前から来る印象としてはフォーキーで静かなアクースティック・ロックという感じであろうか?はたまた、「交差点」からジャム的なルーズさを持ったバンドと感じるか?・・・どれとも思わないという方は・・・・その方が精神活動において健全のような気がする。(笑)
実際は、かなりカントリーというか、土臭いサウンドを土台にしたバンドである。無論、オルタナ・ヘヴィネスのように意味無くギターがブンブンと自己主張はしないが、決してアクースティックギター一本のシンプルなイメージ−60〜70年代的フォークのアクースティック的美学を求めては、予想が大幅に外れると思う。ギターもしっかりエレキを使用しているし、ピアノ、オルガン、フィドル、E−ボウ、アコーディオンにストリングスといった多彩な楽器を絡めた、綺麗に織り込まれたタペストリーのような演奏を聴かせてくれる。当然だがルーツ楽器系の使用が多いため、モダンロックに比較すると、当然のことながら「Acustic」である。更に、ナチュラルでありながら奥の深い音世界はまさに「楽器の交錯点」である。全体としては、無論ルーツテイストが溢れ出ているが、南部系のカントリーロックというより、彼らの活動拠点であるLA周辺を代表するようなウエスト・コースト・ロックの影響が深く伺えるように思う。抜けるように爽やかとまでは言い難いが、テキサスロックのような野暮ったさはあまり感じられない。ブルース系のうねるようなナンバーも殆どない。これは、全編に渡って心地よく流れているピアノの演奏が南部系のスタイルに傾倒してないことが、大きな要因のようである。転がるようなホンキーなスタイルではなく、もっと優しく、コンテンポラリーな鍵盤の音は不思議と、このアルバムの土臭さと溶け合っている。全体としては優しいスローなナンバーやアクースティックバラードが目立つが、それ故にアップテンポな楽しい3〜4曲が引き立つともいえる。#1の踊りたくなるような愉快なカントリー風の『Every Heart』や#3のタイトルトラックの流れるようなミディアムなメロディーは聴き応えがある。お薦めのトラックである。
さて、簡単に彼らを紹介しておこう。これまでにライヴアルバム1枚を含めて、計5枚のアルバムをリリースしている。前作のセルフ・タイトルの『Acustic Junction』(95年発売。96年に正式リリース)がLA周辺でローカルヒットとなり、50,000枚以上のセールスを記録し、地名度が格段と上昇し、レーベルを新たなより大手(とはいえインディだが)に移して発売されたのが本作である。4人編成だが多彩なゲストを迎えて録音されている。メンバーはフロントマンでソロ作も1枚リリースのReed Foehl(Vocal&Guiter)、Tim Poper(Piano,Organ,Harmonica)、Curitis Tompson(Bass)そして今作より交代した新ドラマーのTom Diehlである。バックコーラスはドラムス以外全員がハーモニーを聴かせてくれる。こういう素敵なバンドと廊下の曲がり角(=Junction)でぶつかるのと、可愛い後輩とぶつかるのとどちらが良い?と聴かれたら、前者を選ぶ私は、やはりアホである。(笑) 

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