Forbidden Fruits And Vegetables
         / Danny Flowers (2000)



   Roots      ★★★★

   Pop      ★★★☆

   Rock     ★★★★

   Blues&Punk ★★★★ 


通称ギターの神様、エリック・クラプトン好きの方なら彼の名前は知っているかもしれない。というか、このDanny Flowersは知らなくともこの老眼鏡オヤヂのカヴァーした『Tulsa Time』は多くのロック・ファンがご存知だと思う。この曲を御大に提供しているライターが彼、Danny Flowersである。私がいつもの調子で解説をのたまう前に、クラプトンの推薦のお言葉を和訳してみよう。「このアルバムは並じゃないね。ダニーは私の良き友人であり、ミュージャンの中のミュージシャンと呼んでも差し支えない、古き良き青春時代を回顧させるようなロックを演ってくれる。これ以上のアルバムはそう多くはないだろう。」で、更に大御所のご推薦がある。ロドニー・クロウェルのコメントを続けて。「是非、何百万人ものリスナーに彼の『Forbidden Fruits And Vegetables』を聴いてもらいたい、そうすれば皆がこの素晴らしいシンガーソングライターを知るようになるし、彼がいかに素晴らしいヤツかということも分かるだろう。私はダニーが大好きだし、皆のフェイヴァリットアーティストになってもらいたい。彼がもっと有名になれば、この世は更にハッピーになること請け合いさ。じゃあね。」と実に高い評価を得ている。どれだけ誇大表現が入っているかは某広告審査機構に所属しない筆者には想像の彼方ではある。(笑)ちなみに私の和訳が違っていることに突っ込みを入れるのは非常に恥ずかしい嬉しくないので、メール等でこっそり指摘して戴けると幸いである。(汗)一般にミュージシャン受けのするアーティストはあまり売れないという例が、筆者の僅少な経験からすると、結構多いと考える。多分に漏れず、彼の知名度も絶望的に低そうな気がする。というか、誰かこのCD持っている方、メールください。「心の友」(ジャイ●ン風)になりませう。(かなりダメ)
さて、一応彼の経歴について述べておいた方が良いだろう。インディ系のシンガーソングライターに多いように、彼もミュージシャンとしての活動自体は長い。13年間、これまた日本ではマイナーなカントリーシンガーのDon Williamsのバックとしてギターを弾いていた。曲としてはEmmylou Harrisのデヴューアルバム、更に共作としてWillie NelsonやBruce Springsteenがカヴァーした『Gulf Coast Highway』等を提供している。ソングライターとしてはミュージシャン仲間での評価が高かった彼だが自分用に曲を積極的に書こうとはしなかったらしい。ダニー曰く、「僕は歌を作るより、ギターを弾いていたかった。でも最近になってかくの如く、ソングライティングに熱中できるようになった。今、僕のギタープレイは完璧ではないにしろ、自分が顕したいことの95%は弾ける自信があるんだ。」とのことである。何とも大きな風呂敷を広げたものである。がギターには全く造詣のない私には技術的なことはさっぱり分からないので、彼の発言に対しては何ら言及できない。鍵盤至上主義な筆者はギタープレイより全曲で気持ち良くジャンプしてくれるヤケクソのようなホンキー・トンクでパンキッシュなピアノを聴くだけで嬉しいのであるから。歌唱法はかなりパンク寄りのシャウトな歌い方を、特にアップテンポ&ブルージーな曲で見せているが、アクースティックなスローバラードで聴かせる暖かい声がまた対照的で非常に魅力的である。曲は全15曲で、『Tulsa Time』でガツンガツンなスタートをし、またタルサ・タイムのリプリーズで幕を閉じる。スローな曲はしっとりした優しい弾き語りタイプが多いのに対して、ブルージーでパンキッシュなロックナンバーは非常にガンガンと来るものがある。バックメンバーは所謂テキサスのモダンブルース系の(と言うらしい)ミュージシャンが固めている。昨年、これまた格好の良いブルースロックアルバムをリリースした鍵盤弾きのKevin Mckendreeと彼と仕事をする機会の多いLynn Williams(Drums)とStephen Mackey(Bass)のカルテットが中心である。裏方として長いキャリアがあるアーティストは非常に良い地味なアルバムを作るが、彼もその例にもれず好作を届けてくれた。ちなみに筆者はブルースはあまり好きでないが、このようなロックとブルースの要素が溶け合ったロックアルバムは大好きである。ブルースが苦手な私でも全く問題なく聴けるアルバムなので、皆さんも如何だろうか?


  Grub Dog And The Amazing Sweethearts 
  /Grub Dog And The Amazing Sweethearts (1998)

    Roots       ★★★★

   Pop       ★★★☆

   Rock      ★★★☆

   Alt.Country  ★★★★


このアルバムは名盤に入れても良いくらい好きである。というか十分に私的名盤なのである。それなら何故、名盤コーナーに入っていないかと言うと、単にアップするとこを間違えただけなのである・・・・・・・という冗談はこっちに置いておく。名盤に入れるにはやや荒すぎると言うかポップさにもう一声欲しいかな、という非常に僅少であるのだが、物足りなさをいつも感じるので−それだけ良くプレイヤーに乗っているということではるが−こちらへ入れておいた。上のPopの星が3つ半で無く4つなら間違いなく私的殿堂入りしている、筆者のお気に入りな一枚であることに間違いはないのだが。というか星が4つでも良いのだが・・・・・・あああああ、批評を書こうとして曲を聴くほど詰まらないものはないので、もう止めておく。兎に角、間違いなく本邦では絶望的に知名度の皆無な、しかれども好アルバムであることは保証しよう。#1の『Forever Goldrush』のメリハリの利いたロックナンバーからこの彼のデヴューアルバムは始まる。このややサイケディリックな香りもするダイナミックにスローとアップテンポが交錯するナンバーから、既に骨抜きにされてしまった。(笑)#2『Rock Salt』のハードでキャッチーなオルタナ・カントリーナンバーは私的ベストに頻繁にダビングする曲である。#3『808』も小気味の良いロックナンバーで、インディ風の荒削りなとこが非常にツボである。#5のピアノがキャッチーなラインに絡むミディアムナンバー『Lotion』はこのアルバムで3本の指に入るお気に入りのナンバーである。次の『Eyes』の前には遊び心たっぷりのインストナンバーで、『Empty Roads And Open Bottle』が挿入されている。「ほうれん草を食べてパワーアップする船乗りのアニメ」(まわりくどいね〜)を見ていればニヤリとするだろう。#7と#8の『Empty』は両方ともジェントリーでキャッチーなミディアムな曲で、きっちりとした演奏よりルーズなプレイとヴォーカルが妙にマッチしている。そして歌詞はともかくとして(笑)一番のお気に入りの、投げやりなヴォーカルと力強いコーラスがツボにばっちりきている『Sex,Drugs ,Etc』。愛車の中でこのコーラスを大声で歌っているというのはここだけのヒミツである。(爆)これ以降の3曲はどれもスローなレイドバックナンバーで、彼のルーツへの傾倒が良く現れているが、もう少し最後までロックして欲しかった。やや残念である。この締めの部分が不満で、殿堂入りしなかったのかもしれない。歌詞としてはかなりFな単語が連呼されることが多い。さすがにインディバンド。(笑)当然のことながら甘いラヴ・ソングは皆無と言って良い。どちらかと言うと内面の不満や怒りをかなりストレートに表現した曲が多いと思う。まあ、自分の聴き取りなのでこの辺はなんとも言えないが。兎に角、エモーショナルでヴィヴィッドに富んだグラブ・ドッグのヴォーカルは説得力がある。#2の「I’m A Little Lonely ,I’m A Little Homely」というフレーズが彼の歌の魅力をそして人間性を示唆していると思う。
グラブはカリフォルニアの田舎町出身。7歳で彼の父親がやっていたアマチュアカントリーバンドでドラムを叩き始めたのがキャリアのスタートで、12歳には自分で曲を創り始めたそうである。そして幾つものインディバンドを渡り歩き、ポップスからメタルまであらゆるジャンルの曲を演奏したとのこと。そして96年に北カリフォルニアで現在のバンドを組み、Wiskeytownの前座としてもプレイしてキャリアを積んだ。というかこの時に筆者は彼らを知ったのだが。(笑)
The Amazing Sweetheartsは3人編成でギターのB. Guido、ドラマーのBill Craig、そしてアクースティックギタリストの Joe Kojima (どうやら日系人ぽい。話さなかったのでわからないが顔はもろ東洋人である。)その他準メンバーとして5名ほどのメンツがレコーディングに参加している。というかベースとキーボードが不在の編成なため必然ではあると思うが。グラブはギターは勿論弾くが、ドラマーとしてのキャリアを生かして相当数のナンバーでドラムを叩いている。
現在、入手方法はオフィシャルサイトの通販に限定されている。$11と安く、オマケのライヴCD-Rもつくというサーヴィスぶりであるので購入して損は全くない。こういったアーティストが英国至上主義の日本で全く脚光を浴びないのは実に残念である。


   Mosquito Spiral / The Volebeats (2000)

   Roots     ★★☆

   Pop     ★★★★☆

   Rock    ★★★

   Acustic  ★★★



タイトルの『Mosqutio Spiral』とは何ぞや、とこのアルバムを注文した時に疑問に思ったのだが、手元にきた瞬間、「ああ、金●の夏、日本の夏やね。」とあっさり納得した。(笑)こんなのジャケットのデザインにして●鳥から版権の請求されないか、このジャケをアップした私も心配している。実は大嘘。大体日本人の目に入るところにこのアルバムがそうそう転がってる訳が無いのである。というか、筆者が蚊取り線香メーカーに密告しようかとも考えたが、とばっちりが来そうなので止めた。(笑)さて、お笑いネタは恐らく寒すぎるので、中断するが、もう少々愚痴を述べたいので、鬱陶しい方はここ数行は読み飛ばして戴きたい。・・・・というよりテキスト量が長過ぎて殆どの来訪者が読んでないらしい・・・・まあ、どーでも良いが。さて、このVolebeatsのフルアルバムとしては5枚目−1995年に『Bettersweet』というミニアルバムをリリースしているが−の本作であるが、昨年の秋の段階で本国の米国でのリリースが無期延期されたとの連絡が届いた。前評判では「非常にポップになった。」ということだったので、かなり期待していただけに落胆も大きく、仕方ないので独逸のレーベル、Blue Roseから取り寄せる羽目になった。このレーベルはCDの代金は割安なのだが輸送手数料が高くて、結局トータル的には高くつくのであまり使いたくなかったが致し方なかった。で、1枚で買うとコストパフォーマンスが悪いので少々興味がある他のアルバムと纏め買いしたのだが、よりによってこのアルバムの注文番号を見事に間違え、全然欲しくなかったアルバムが届いた。しかも見事なハズレ盤。(自爆)ということで再度注文したのだが、その時も他のあまり欲しく無さそうなアルバムと纏め買いした−輸送料金が高いので仕方が無い−ので実際はかなり高くついたアルバムとなった。しかしながら、アルバムの出来はかなり良かったので満足していたら、今年の3月に米国でもリリースが決まったそうである・・・・・・・。(沈没)追記であるがこのアルバムの相対輸送コストを下げるために購入したアルバムは1枚を除き全てダメダメな出来であった。(トドメ)
愚痴だけでここまでテキスト量を増やしてしまったため、簡潔に行こう。前作の『Solitude』(1999)がトレディショナルなインストナンバーが殆どのゴシック調の奇作だったので、少々作風に対して不安があった。が全く方向性を変えて、これまでの彼らの地味なカントリータッチのスローなポップロックが殆どであったのを、非常にポップでキャッチーなアップテンポな曲を多数入れたアルバムに仕上げてきた。#1の『Radio Flyer』のパワーポップというか産業ロック風の煌びやかな出だしは正直面食らった。無論良い意味であるが。続く#2『Not Here Not Go』も明るくコマーシャルなミディアム・アップテンポな曲。#3の『I Tried To Tell You』で漸く以前のカントリーロック風のゆったりしたナンバーが登場するが、以前ほどの垢抜けの無さが随分減っている。#4や#8のようにシンセサウンドを嫌味にならないほどに取り入れた非常にドリーミーなポップロックソングを聴くと、爽やかなギター・ポップバンドになってきた感が強い。とはいえ、勿論、アクースティックでアメリカンルーツ系なバックボーンは皆無になった訳ではなく、良い味付け風味としてきっちりメロディの端々で自己主張している。良い意味で派手になったなあ、と非常に喜ばしい。
一応バンドについて簡単に触れておこう。1989年に著者が98年に走り回っていたミシガン州はデトロイトで結成された。中心人物はJeff Oakes (Vocal)とMatthew Smith (Guitar&Vocal)で後のメンバーは3枚目の傑作アルバムである『Sky And Ocean』(1998)まで流動的だったが、Bob McCreedy(Guitar&Vocal)、Russ Ledford(Bass)、Scott Michalski (Drums)、Kier McDonald(Piano)で最近は固定されたようである。本作のクレジットからキーボードのキアーが抜けているので脱退したか準メンバーになった可能性がある。が、彼らは常にインナーには全くと言って良いほどパーソナルなことやレコーディングデータを残してくれず、オフィシャルのHPにもずっとアクセスできないので、情報が不足している。どなたかご存知の方は教えて戴きたい。
兎に角、非常にまろやかなポップアルバムになっている。3作目の『Sky And Ocean』でもかなりスマートになってきたという感が強かったのだが、それ以上に洗錬されている。米国での発売も決定したのでこの機会にこのユニークなジャケットを見て欲しい。(笑)
残念ながら、以前のアルバムに興味ありという方には、インストゥルメンタルアルバムである1999年の『Solitude』以外は品薄であるため地道にオークション等を探すことをお薦めする。


    A Strange Sort Of Prayer / Cropduster (1998)  

    Roots       ★★★★★

    Pop       ★★★☆ 

    Rock      ★★★☆

    Alt.Country ★★★★★




同間違っても日本盤がリリースされそうも無いこのようなアルバムを紹介するのは非常にワクワクするものがある。「ひょっとしたら、誰か『よう知っとるでー』がカキコしてくれるんちゃうかなあ?」と0.99%くらいは期待ができるからである。少々少ないかもしれないが、筆者も自分のコア過ぎる選択肢に対し幻想は全く抱いていないので。(涙)
もう、このジャケットを見ただけで、即ジャケ買いをした筆者はかなりの重症である。とはいえ、あまりカントリー・カントリーしたもろなカントリーは全く好きでないので、このようないかにもカントリー系のジャケ買いを敢行するのはかなりのギャンブルになる。良く外れて、ウェスタンな音楽を聴きつつ涙を流しながら「ハズレ箱」を引っ張り出してくる時の悲しさは筆舌に尽くしがたい。しかしながら、この『A Strange Sort Of Prayer』はかなりの当たりであった。インディショップの手書きポップでは「Cow Punk Band From Milwaukee」となっていたが、このバンドの出身は北カリフォルニアの田舎町ペタルマというところだそうである。全くいい加減なものである。別に買う時の参考にした訳ではないのだが、Cow PunkというよりもAlt.Country(余り差がないようでもあるけど)バンドであろう。Punk系に限定せず、サザンロック系の豪快さも、アメリカ中西部の中庸的なセンスも伺えるバンドであるのだから。Alt.Countryという概念もその黎明期はガレージパックを伝統的なカントリーミュージックに融合したもの、という捉え方をされてきたが、現在は幅広いルーツ系の音楽でロックサイドを強調しつつ、カントリーの要素との折り合いもつけている音楽の総称的なカテゴライズになってきているようなので、筆者もその大勢に従うとする。
さて、彼らに関してはあまり以前の活動を記した資料が存在しない。ただ、1998年にこのデヴューアルバムをリリースする前はローカルでパンクバンドをずっと続けていたらしい。当時の彼らの音にはルーツ系の要素が入る余地は全くなかったそうである、本人達のコメントによるとだが。が、パンクロックの音に限界を感じたのか壁にぶち当たってしまったのかはよく分からないのだが、スライドギターを取り入れて、カントリー系の音を追及してみたら不思議にハマッてしまい、それ以来ルーツ系の音楽に傾倒し出したらしい。実際パンク的な色合いはアルバムを聴いていてもそれほど伺うことはできないと感じられる。素晴らしくロックンロールなナンバーの#1『Absentee』がこのアルバムで私の一番のお気に入りであり、確かに正統的オルタナ・カントリー・ナンバーなのだが、同時にサザンロックの豪快さも感じられるし、続いて突入するキャッチーなカントリーロックなトラックの#2『Little Voice』もミディアムなロックチューンの#3『The Son Of The Neverending Night』も西海岸のバンドというよりミネアポリス的な中部の中庸さが浮き出てくるナンバーに思えて仕方がないし、ハードでブルースのフレイヴァーが強いうねるようなナンバーの#9『Airstream』にしろ、続く#10『Gullwing(Delerean’s Dream)』のサイケディリックなハードナンバーも、やはり南部系のロックテイストが表面に出ている感じがする。残りの曲は殆どアクースティックなスローナンバーかカントリーソング系のフォーキィな色合いが濃い。#6の『California Cotton』の如くトレディショナルを典型的なカントリー・ポップチューンに仕上げたナンバーも挿入されており、全体としては非常に埃っぽい印象であるが、退屈せずに楽しめる。パンクバンドからの転向組みならば全12曲のうち、もう少しロックテイストを増やして欲しかった気がするが、それは贅沢というものであろう。
編成はアルバムリリース時で5名である。曲創りの名義は全てバンドの共作となっているのでフロントマンは良く分からないのが正直なところである。ペダル・スティール専門のJustin Barrという人がバンドにいるところがこのバンドのカラーを顕著に示していると思う。実に正統派なカントリーロック・バンドであるがカントリーっぽいだけのバンドでは決してないので、アメリカンロック好きな方ならきっと気に入るに違いないと思う。
他のメンバーを紹介しておくと、リードヴォーカル&ギターにAndrew Asp、ギターとヴォーカルがBrian Flizpatrick、ベースにPaul Hoffman、ドラムスがJamie vossにスティール弾きのJustinの5人であり、殆どがパンクロックバンド活動のバックボーンを持っているとのことである。



   The Secret Of Magnets / Solid For Sixty (2001)

    Roots        ★★★★

    Pop        ★★★

    Rock      ★★★★

    Alt.Country ★★★★
      


1999年の暮れに近い頃、「素晴らしいバンドが出来るんやで〜。」という情報を海外筋から得た。何でも幾つかの実力派のローカルグループ(ルーツやカントリー系の)からメンバーが集まって極上のオルタナ・カントリー・バンドを結成すると聞き、名前が『Solid For Sixty』と知ってその名前の響きだけで気に入ってしまったバンドが彼らである。ところがそれからが長い道のりであった。日光東照宮に神様でも何でもないのに祭られて、人の人生を云々ぬかした、狸爺いの言葉ではないが、確かに重荷を背負って坂道を登るように、フルアルバムを手に入れるまでは1年以上を要したのであるから。レーベルのバンド情報は何時までたってもNot Yetだし、いい加減忘れかけてきた頃、コンピレーションのマニア必須アルバムである『Hit The Hey Vol.4』に彼らの新曲が入ると知り、喜び勇んで購入しプレイヤーに放り込んだら流れてきたのはかなりカントリーカラーの強いアクースティックでスローなナンバーだった。「意外におとないしいねんな。確かにポップな出来やから期待はでけるやろ。」と当時は思いつつ、新曲がリリースされるくらいだしアルバムも発売目前と推定して待つこと数ヶ月・・・・ついに年が明けて新世紀に突入した後でアルバムが手元に届けられた。今回はまずバンドの情報から述べてみよう。このバンドの格好の良い(というか良さそうな)名前の由来はマサーチューセッツ州の港町、プリマスの60年代のキャンペーンの名前から取ったそうである。差し詰め「60年代を飛躍の土台へ」といったニュアンスの地域振興的なスローガンかな?
バンドの編成は5人で私の嫌いなギタリスト過多編成(HMバンドじゃあないのに電気ギターが3人とかいるバンドは基本的に嫌い、というより鍵盤弾き入れろ。)ではなく、Gerry McGoldrick(L.Vocal&Gguitar)、 Anthony Borgesi(Drums)、 Todd Sandler(Bass)、 Frank Brown(Guitar&vocals)、 Dan McKinney(Organ&Piano) という基本に忠実な形をとっている。前述のようにメンバーそれぞれがローカルバンドから集まったユニットとのこと。活動拠点は東海岸のようであるが、サウンド的にはどちらかといえばサザンロック系に入るのではないかと思う。
コンピレーションに入っていたようなポップなカントリータッチのナンバーも無いことはないのだが、全編に流れるハモンドB3のうねるような音に乗せたかなりブルージーでハード寄りなロックナンバーが非常に目立つアルバムである。勿論、中には#7『Blue&Hazel』や#4の『Deep Blue Concussion』のようなアクースティックなルーツナンバーも聴くことができるが、圧倒的にロックナンバーの占める割合が大きい。最初の頭2曲はかなりブルースっぽい重いロックナンバーで先行で録音されたナンバーのイメージとあまりにもそぐわないため、いちいちプレイヤーからCDを取り出して確認までしてしまった。(汗)特に後半は#6『Twisted Time』や#9『All Comes Down』を筆頭にして、殆どがオルガンのうねりにギターが絡むロックナンバーとなっている。とはいえ、#3の『Crazy』や#5『Only One Awake』のように優しいポップなミディアムラインにピアノが転がるような地味だが小気味の良いナンバーも揃っていて、予想を外れた出来なアルバムではあったけど、期待は全く外していない。もう少し垢抜けた演奏と歌唱法を付け加えれば1996年の大傑作であるThe Wallflowersの『Bringing Down The Horse』に繋がる美点がありそうである。安易にカントリーサイドに傾倒しない、かなり正統派なアメリカン・ロックバンドの発芽前の芽を持ったバンドであるので、これからの活動を是非とも注目したい。・・・・情報が少ないのでかなり大変ではあるけどね。(笑)
メジャーになるにはややヴォーカルが弱くはないが個性が少々足りない気がするのが、珠に傷であると思う。ソウルフルでSon Voltのジェイ・ファーラーを連想させる良い声なのだが最近このような声に食傷気味なためやや採点が辛くはなっているようだ。

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